司会 |

プレゼンで必ず気をつけていることってありますか?

岡野 |

毎回、違うけど、必ずやるのは提案のバックボーンとデザインの根拠をしっかり伝えることかな。例えば、この色にした理由とか、この形にした理由とかね。例えば、「ここは白色である必要があるんです」と説明できるようには準備する。

神保 |

これが、さっきも話したアーティストとデザイナーの違いなの。「僕の世界は白色だから、ここは白色だよ」って言うのがアーティスト。お客さまの側に立って「お客さまの課題を考えると、ここは白色なんです」と提案するのがデザイナー。「なんでこの素材なんですか?」って聞かれて答えられないのはダメだよね。
若い部下に「何でこうしたの?」って聞くと「僕はこれがデザイン的に良いと思うんです」って答えが返ってくる。「君にとっていいかどうか、好きかどうかはどうでもいい。
お客さまにとってメリットがあるのか」って、つまりそういうこと。

司会 |

ビジネスの基本ですね。

神保 |

そう、ビジネスの基本。でも、それがデザイナーの本質。

岡野 |

全部そうよ。

神保 |

お客さまのメリットをまず考えないと。

司会 |

そういえば、プレゼンといえば、昔、神保さんがプレゼンで提出するCGのつくり方についてこだわってましたね。

神保 |

そうだね、“プレゼン向けに見栄えを良くするCG”っていくらでも描けるんだよ。でも、実際に完成したときにお客さまが肉眼で確認できないような構図のCGは描かない。だって実際にはそんな光景は見られないんだから。

司会 |

確かに竣工後の写真撮影で、CG通りの角度・構図で撮れますよね。一般のCGには「壁の中や、壁を隔てた場所からの光景をCGにしている」のもありますからね。「そんな距離ないでしょ、この空間に」みたいな。

神保 |

それはね、やはりコンペをやっているからなんだよ。結局、お客さまが納得できる「そうだね」っていうものじゃなく、競合するライバルに勝つためのCGになってしまうんだと思う。

岡野 |

完成後の現実と異なるCGを描いているか、技術的に追いつかないものをCGとして描いちゃったのか。「こういう空間になるんだ」っていう空気感を伝えて共有するものではなく、「CGとして格好いい」というものになっちゃう。

神保 |

そう。お客さまには、それらのCGと実際に完成する空間に乖離があるってことはわからないからさ。これもコンペの弊害と言えば弊害なんだよね。

岡野 |

あるプロジェクトの打ち上げの時に、関わっていただいた施設管理会社の方から「最初は翔栄クリエイトなんて聞いたことものない会社で、どこの馬の骨が来たんだって思ってたけど、会議参加していて、パースを見て、竣工した実物を見たら、パース通りにできてる。長年色々なテナントを見てきたけど、パース通りに仕上がってるオフィスを初めてみたよ」って言われたことがある。これは褒め言葉だって(笑)
その人が言うには、良かったことは無いんだって、パースより実物が。

司会 |

なるほど。

岡野 |

その会社さんは物凄い数テナントのオフィスデザインを見ている。そいう人からの言葉だったんで、本当に「ありがとうございます」って感じでしたね。

神保 |

嬉しいよね。