司会 |
神保さん、最近の空間デザインの傾向ってあるんですか?
神保 |
今、デザイン業界というか、時代の大きな流れとしては「素地」……素材そのものを活かしたものが流行ってると思うよ。食べ物もそうだし、何でもそうだけど、飾らない本質が、時代的に求められているんじゃないかな。 空間創りも、例えば木材でも変に塗装しない。素地をそのままキレイに見せるとかね。カフェもそうだけどナチュラル志向というか、大きいうねりとしては、そういうのがあるかもしれない。デザインというのは、ある意味、時代を映す鏡だから。
岡野 |
うん。
神保 |
バブルの時もそうだったじゃない。あの時はギラギラしていてさ。加工して加工してって。今とは真逆だよね。
司会 |
岡野さんはそんなデザインの傾向の中、自分自身で心がけていることってありますか。
岡野 |
無いね(笑) 僕のスタンスとしては、あえて流行とか全く考えていない。 お客さまの言葉からデザインをどれだけ磨けるかを常に考えている。これは昔から。 完全にフラットにはなれないけど、限りなくフラットな状態でいたい。 だから、デザインに対する好き嫌いはないし、持たないようにしている。 心がけているのは、お客さまが思い描く将来像・イメージを言葉で引き出して、必ずそこにたどり着くことなんだよね。
司会 |
言葉で引き出す?
岡野 |
お客さまは画を描けないから。だからイメージのクラッチ合わせのために、いっぱいCGも描きたいし、いっぱい図面も描きたい。その作業の時間を確保するための努力は昔から半端なくやってます(笑) CGだって仮レンダリングの状態でもいいから、20案持っていくとか。そうしないと、本当に伝わらないと思う。
司会 |
伝わらないですよね、本当に。
岡野 |
頭の中にあるイメージってテレパシーで共有できない。だからお客さまが持っているイメージを探るために、こちらのイメージをたくさん持っていって見せる。「お客さまが目指すところをどうやったら自分は理解できるのか」ということをたくさん試行錯誤する。 ……というのが僕のデザインなんだよね。
司会 |
そうすると、凄い工数がかかりますよね?
岡野 |
うん、でもそれが大切なことだと思う。
司会 |
素材のサンプルなんかもすごく多くの数を見て検討してますよね。お客さまにも複数をご提示してて。
神保 |
まあプロという意味での一番の理想は、「お客さまにはこれがベストです。なぜなら~~」っていうものを1つだけポンと出せること。
岡野 |
そうそうそう。昔、1回やってみて怒られた。1つしか見せないのって?
神保 |
(笑)
司会 |
実際、そんなケースってあるんですか。
神保 |
あるよ。お客さまの希望や予算などを考えていくと、これしかないって場合もね。 でも、大半はそこまで言えるほどの深い深いヒアリングは非常に難しいし、お客さま自身も考えがブレることだってあるし好みもある。そうなると、やっぱりある程度は数を出して「どれを選んでも間違いはありません」って言う出し方をする事が多いと思う。 ただ、すごくたくさんの数を持っていく時は、ヒアリングやコミュニケーションが不十分だったり、またはこちらが迷っている時だよね。
岡野 |
うん。 ただいずれにせよ、デザイナーとしては、とにかくサンプルはたくさん見ないとダメだね。「これだ」ってお客さまに言っていただけるものを見つけ出すためにもね。
司会 |
お客さまに持っていく1つのサンプルに対しても、事前に20個以上は比較しておくとか?
岡野 |
そうだよ、そうだよ。